文学

『本格小説 上・下』(水村美苗)

水村氏はこの物語を語るにあたって、幾重にも語りの層を塗り込め、重ねていく。それらが堆積し、ひとつのヒストリカル・ロマンとしての厚みを形成していく。 まず第一に、冒頭に置かれた著者自身の”語り”、そして第二に、祐介という青年がアメリカにいた著者…

『石の来歴』(奥泉光)

奥泉光氏の『石の来歴』、『三つ目の鯰』を読了。非常に密度の濃い読書体験であった。ここ最近、奥泉氏の著作を固め読みすることにして『バナールな現象』、『モーダルな事象』と続き三冊目に表題作『石の来歴』と『三つ目の鯰』、二つの中編を所収するこの…